この生徒は2018年11月に新規入会しました。
もともと偏差値は四谷大塚で4教科で62あったのですが、目標偏差値が69ですからこのままでは合格は厳しい状況でした。相対的に理科に不安があったため、理科の弱点補強をしたいという目的で入会したそうです。
私が担当することになりまず行ったことは、志望校に対する気持ちの強さを確認することです。どうしても第一志望校に合格したいということでしたので、
を行い、授業を開始しました。
過去問分析の結果、特定の単元に偏らず、まんべんなく対策しておくことが必要でした。また、問題の解き方を知っているだけでは答えられないような出題もあることをつかんだため、対策授業をするからには
を理解した上でそれを文章で書ける力をつけるよう、いわゆる記述式答案の書き方を徹底的に指導しました。
弱点補強が主目的でしたので、いくら志望校のレベルが高かろうが、いや、だからこそ確固たる基礎力をつけることに徹しました。弱点である単元について、初歩中の初歩から学習し直したのです。うろ覚え状態や些細なミスが生じる状態でとどまることを許さず、基礎力を完璧に仕上げることに集中しました。地味な練習もありましたので、生徒はよくがんばったと思います。この一つの単元を仕上げるのに1か月(授業4回)かかりました。
その時点で12月ですから、教務担当社員からは授業内容を第二志望などの学校の過去問演習に移行することを打診されました。
しかし、私の中の「成果を出すための」優先順位に従い、他科目の点数の取り方なども資料で確認した上で総合的に判断し、取り組むべき複数の単元学習を終わらせてから過去問演習に進む、という流れを貫きました。数年分は入会前に解いたことがあったということも本人からきいていたということもあります。
これ自体は偶然に過ぎませんが、結果としてその徹底的に対策した単元である「てこ」が本試験で出題されたのです!
もちろん、合格の最も大きい要因は、生徒本人が頑張って取り組んだことや、その環境をつくってきた保護者さまの尽力であることはいうまでもありません。
その努力が実を結ぶことになり、私にとっても印象深いものになりました。
この生徒は高校3年生のときから2年間担当しました。
現役時は難関国立大学を第一志望とし、私立大学は早慶を希望していました。
英語と国語が得意ということでしたので、難関国立大学に対応するため数学の指導を開始することとしました。
現役生を対象とする塾に通っており、個別指導塾にも通う主目的は弱点補強であることを踏まえ、基礎力養成やセンター試験対策は塾に任せ、そこでは対応が難しいであろう頻出分野の単元学習に的を絞り授業を行っていました。
学校の宿題もあり、そのメインの塾の宿題もあるなか、こちらで学習した内容の復習時間がほぼ取れない状況でしたので、内容を絞らざるを得なかったのです。もちろん、これらの決定プロセスは生徒本人と話し合って決めたものです。
第一志望の大学ではパターン学習だけでは対応できない問題が出される傾向にあり、整数、確率、データの分析が頻出であるため、授業で扱う内容は、確率と整数の記述式問題に対応するための知識の習得と表現方法指導に絞り込みました。
しかし、センター試験で目標とする点数に大きく届かず、国立大学の出願校を第一志望から変更することを余儀なくされた結果、 試験問題の傾向が大きく変わる大学を受験することになりました。その大学では対策の中心に据えてきた単元の出題がほぼなく、これまで学習した効果が見込めなくなったこともあったのでしょう。合格した大学もあったものの、本人や保護者の方の希望とは開きがあり、現役時は残念な結果に終わることになりました。
この結果であれば、ほとんどの生徒は別の個別指導塾に移ります。私としては、もっと踏み込んでこちらをメインにするくらいの提案をすべきだったな、と反省していたところ、引き続き私が担当することになったのです。同じ塾内であっても担当講師を変えるという選択もあったのにです。
浪人生となることが決まり、メインの予備校が決まった段階で二度と同じ失敗を繰り返さないよう、
を改めて確認しました。その上で、受験までに具体的に何をしていくかの全体像を説明することにしたのです。
それは、
という作戦です。これらを予定通り実行できれば、自ずと合格するものだと伝えたのです。
まず、授業開始前に生徒本人とよく話し合い、生徒の希望と私の提案のすり合わせを行ったのです。使い始める教材を決めるために根拠が曖昧な推測を捨て、実際にできることとできないことをあぶり出すことから始めました。
その結果、数学に関しては、思い切って教科書傍用問題集を使うことにしたのです。
文系数学であったためⅠAⅡB の全ての単元について、全問解けるようになることを最優先することを提案し、生徒も了承してくれました。
そして、4月第1回の授業からは、全ての単元について初歩的な問題を全てできるようにする作業に取り掛かることにしたのです。
並行して、論理的な記述式答案の書き方を身につけるための練習も行いました。
必要条件と十分条件に焦点を当て、これを意識した答案の書き方を身につけてもらうためです。この素養は、難関大学の記述式問題を記述するために欠かせないものです。
ちなみに、この生徒は難関中学高校出身者であるため、ほとんどの同級生の志望校もトップクラスです。友人に医学部受験者も多く、特に優秀な生徒はそういった生徒だけが集まる塾に通ったりしています。
そういう環境の出身でありながら、浪人してからいまさら教科書傍用問題集に戻り、易しい問題を確実に解けるようになる練習をすることは、とても勇気がいることだと思います。この決断には敬意を表します。
それをコツコツと実行し続けたのです。その結果、1学期のうちに
を完成させることができました。そこで培った実力が花開き、2学期の駿台の模擬試験では数学で偏差値74を叩き出すまでになりました。
私の立場からいえば、基礎力を徹底的につけた生徒に毎年起きている当たり前のことがまた起きただけのことにすぎません。それでも、実際にこのような数字をみると励みになることは事実です。生徒からしても、このやり方でいいのだと実感できたことと思います。
センター試験対策は、9月以降、まずは苦手な単元に的を絞り、本試験のみならず追試験も活用しました。生徒の現役時、実際にセンター試験の過去問演習やその得点の把握に踏み込まなかったことの反省を活かし、数学は満点を取るのが当たり前という目標を掲げ、実際に取れるまで繰り返し訓練し、その結果を確認することを徹底しました。
数学が仕上がる見通しが立った時点で、他科目の進度もチェックし、実際に練習で高得点を取るという体験をしておいてもらうよう、授業のたびごとに促しました。
そして迎えた本番、生徒自身が頑張った結果、配点900点のうち、9割(810点)を超える得点を取ったのです!
このセンター試験で高得点を取れたことが功を奏し、私立第一志望校に合格することができました。その生徒によると、ご家族の方々がとても喜んでくれたそうです。